犬白内障
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水晶体 とは?水晶体が混濁すると白内障になる?

公開日
更新日

 
執筆:碧井 香 (獣医師・獣医学博士)
 
 
人では一般的な目の病気である白内障ですが、犬にも起こります。白内障は目の 水晶体 と言う部分が白く混濁した状態です。飼い主さんが見てわかるくらい白くなっていることもあれば、気づかないうちにゆっくり進行している場合もあります。
人なら自分で見えづらいという症状を感じることが出来ますが、犬は自覚症状を訴えることはできません。
では、そもそも 水晶体 とはどんなものなのでしょうか?
 
 

水晶体 とは?人と犬の違いは?

 
眼は球体をしています。ほとんどが眼窩(目玉があるくぼみ)に収まっています。
水晶体は水晶体嚢という袋に包まれていて、その中の外側が水晶体皮質、中心部が水晶体核という構造になっています。
 
水晶体は毛様体という組織につながっています。これにより水晶体の厚さを調節し、近いものや遠いものに焦点を合わせて、ピント調節を行っています。
人では水晶体が薄く、毛様体による調節を受けやすいので近い物から遠くの物まで幅広く見ることが出来ます。犬の場合、水晶体がとても厚く、ラグビーボールのような形をしており、ピントが合せにくい傾向にあります。そのため、ピントが合う範囲が限られています。
 
 

水晶体の混濁は何故起こる?

 
水晶体はカメラのレンズに例えられることが多く、構造も同じように考えられがちですが、カメラのレンズのようにすべてがガラスやプラスチックで出来ているわけではなく水晶体線維という細胞で出来ています。
 
水晶体を形成している細胞はタンパク質やミネラルなどいろいろな物質で満たされています。細胞はとても小さく、通常水晶体は透明です。しかし、様々な刺激により細胞の中のタンパク質が変性すると、水晶体が大きくなったり白くなったりします。
この異常なたんぱくが増えると水晶体が濁り、視界が悪化します。犬では水晶体の混濁は加齢によるものがほとんどですが、中には他の疾患(糖尿病や他の眼の病気)に追随して起こるもの、外傷で発生することもあります。
 
 

水晶体の混濁への対応、治療法

 
飼い主さんが犬の目を見て、黒目の部分の白濁に気づくほど状態が進んでいると、すでに視力はかなり低下しています。家での様子やお散歩中の歩き方から、視力の低下に気づいてあげることができるかもしれません。
 
年齢を重ねた犬を飼っているのでしたら、予防接種や定期検診の時に、獣医師に視力について相談してみるといいでしょう。どの程度見えているのか、視力の低下がおきているのであれば、その原因を調べてもらいましょう。白内障以外の原因も考えられますので、獣医師に診断してもらうのが一番です。
 
水晶体の混濁(白内障)と診断されたら、その程度によって治療方法が提案されるでしょう。早期の段階であれば、目薬や飲み薬などの投与を行うこともあります。もし、白内障が加齢によるものではなく他の疾病に追随して起こっているなら、原因となる元の疾患の治療をしっかり行わなくてはなりません。
 
白内障の程度によっては外科的な手術を選択することがありますが、失明していたら手術はしません。犬の場合、人の白内障のように手術は一日で簡単に終わるというわけにはいきません。人は眼だけの局所麻酔で行いますが、犬の場合は手術中にじっとしていることは困難ですので、当然、全身麻酔になります。手術後も患部を触るのを我慢することは出来ませんので、エリザベスカーラーを用いるなど数週間にわたってケアが必要です。
 
術式は基本的には人と同じです。水晶体嚢に穴を開け、水晶体のなかみを除去し、そこに人工レンズを移植します。しかし、水晶体の厚みが人の倍近くもあるため、破砕したり除去したりするのにかなりの時間がかかります。このため、目への負担は大きくなります。
 
 

まとめ

 
水晶体が濁らないように予防することを心がけるのは大切なことです。日頃から、バランスのいい食事を与えましょう。白内障を合併する疾患にかかっている場合にはその原因疾患をきちんと治療するのが重要です。
 
眼を酷使したり、紫外線などの刺激を過度に与えないことも予防につながります。犬の場合、人ほど情報を得るのに視覚に頼っていないので、そんなに神経質になる必要はないでしょう。もし、眼が見えづらくなっているようなしぐさを見つけたら、気軽に獣医に相談するのが一番です。
 
 
<執筆者プロフィール>
碧井 香 (あおい こう)
獣医師・獣医学博士。
現在はフリーライターなど多岐に活動。
麻布大学獣医学部卒業 獣医師免許取得、某アニマルクリニックに勤務しながら、同大学院にて獣医学博士号取得、独立行政法人某研究所勤務、アメリカの研究機関勤務を経て今に至る。

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